だから、シャルロットは喜んだのだ。がんばれば、今度こそアルブレヒトと一緒にいられると思って。
 ──……今度、こそ?

「今度……?」
「シャルロット?」

 そういえば、どうしてシャルロットはあんなにもアルブレヒトに会いたかったのだろう。
 アルブレヒトがこんなにも大切で、幸せにしたいと強く思う。

 けれど、その根源にある──なにか、大きななにかがわからなかった。
 シャルロットは、アルブレヒトが本当なに、本当に大好きで──……。
 大切なことが、シャルロットの中には残ってはいなかった。

 ふいに、気づかぬうちに、ぽたぽたとシャルロットの緑の目から大きな粒が落ちる。
 パズルのピースは一つではなかった。シャルロットの中には、アルブレヒトへの、理由のわからない、大きな感情しか残っていやしなかったのだと理解してしまった。

「お父さま……。わたし、どうしてアルブレヒトさまが好きなの?」
「シャルロット……?」
「アルブレヒトさまが好き、大好き……。でも、わたしはどうしてアルブレヒトさまが好きなの?」

 幸せにしたい。笑ってほしい。ずっと一緒にいたい。だって、約束を、した、から。

「約束したの、わたし、勝手に約束したの」
「まさか、お前……」
「わたしは、なにをやくそくしたの?」

 こんなわたしじゃ、アルブレヒトさまを幸せにできないかもしれない。しくしくと──いいや、もはやそうすることすらできていなかった。

 のどを鳴らして声も出せずに涙を流す、痛ましいシャルロットを、ヒュントヘン公爵はただ、ただ、見ていた。