落としどころはというのは、みんながそれでいいと思う考えらしい。
 みんながそれでいいと思って、そうしてシャルロットも家族も、アルブレヒトも幸せになれれば、それが一番よかった。

 そう思って伸び上がったシャルロットに、父ははっとしたように目をしばたたく。

「そうだね……お前は優しい子だ。本当に、私たちの誇りだ」
「お父さま、どうして泣いているの」
「そうだね……お父さまというものは、大事な娘がお嫁に行ってしまうのがとてもさみしい生き物なんだ」
「お父さま、さみしいの?シャルは今度の週末には帰ってくるわ」

 直した一人称が元に戻ってしまった。けれど、いつも大きく見えた父が、いつになく小さく見えて、シャルロットは眉尻を下げた。手を伸ばし、父の少し透明なものの多くなった銀髪をそうっとなでる。

 シャルロットは、いつもこうされるとうれしくなったから。

「おきさき教育、なんでしょう?帰ってこれると聞いたのよ」

 慣れない言葉を舌の上で転がす。うまく言えない言葉は、シャルロットには「ずっとアルブレヒトと一緒にいられるようにするための勉強」だと告げられていた。