「ヴィル、お前はシャロの前では猫をかぶりすぎだ。今のお前を見れば僕のシャロが泣く」
「お前のじゃないお前のじゃない。まだお前のじゃない。それにヒュントヘン家の男子たるもの猫は被らない主義だ」
「ならお前がシャロの前で被っているのはなんなんだ」
「子犬に決まってるだろ」

 軽口を叩きながらも、手は休めず書類を片付けるヴィルヘルムとアルブレヒトは、共に同じ学園に通った仲だ。もっと言えば、寮生活で同じ鍋のシチューを飲んだ仲だ。

「ん、これサイン」
「わかった。……ヴィル、こっちを騎士団へ。あちらの管轄のものが混じっている」
「そこに置いといてくれ。これと一緒に持っていく」

 ヴィルヘルムは肩で結った銀髪をぐしゃぐしゃにしてああ!と声をあげた。

「あとどれだけあるんだこれ」
「あの束ふた山でとりあえずは終わりだ」
「頭の固い連中が?俺のかわいいシャルロットに?ケチをつけるたぁフザケンナって感じだよ」