そんな彼を、誰が呼び始めたのか、たしか玉砕した令嬢の親だったか。曰く、氷の王太子。
 だが、正直言って、ヴィルヘルムはそんなことは全く思っていなかった。

 アルブレヒトの頭脳や技量や器量。それは、凍った奴が持つ柔軟さではないだろうと。
 凍っているなら愛犬に狂った現王のせいで、この国はとっくに更地になっている。
 この国は今、アルブレヒトが支えているといっても良かった。
 だが、それはそれとして。

「アル、俺のかわいいかわいいシャルロットを婚約者にしたくせにその顔はなんだ?不満があるわけないだろ」

 ヴィルヘルムは断言した。

 この親友は、それはそれは熱烈なプロポーズを、かわいいかわいいもひとつおまけにかわいすぎるヴィルヘルムの妹にしてくれやがったのだ。

 お陰で可愛いシャルロットは朝から王城まで出向いてお妃教育だ。
 かわいいが生意気で甘えてくれない双子の妹はまた留学先へいってしまった。

 だからこそ、兄として、もっと朝から晩までかわいい末の妹を愛で倒したかったところをかっさらわれてヴィルヘルムは王太子の前だというのを気にしないで堂々とぶすくれていた。