──聞こえているよ。大丈夫だよ。

 ふわふわしておぼつかない頭でそう返す。
 ああ、そうだ。瞼のとばりが完全におりてしまう、その前に、絶対に言わないといけないことがあるのを思い出した。

「……きゃう」

 戻ってくるよ。あなたのところに、絶対に、絶対に、帰ってくるよ。
 どう頑張っても、わたしの黒い唇からは言葉は出ない。けれど、勝手に約束をした。
 体が氷みたいにうごかなくなっていく。視界が煙って、大好きなご主人様の青い目が見られなくなった。