黙り込む父は、いつもと違う。不安になって振り返ると、心配そうにシャルロットを見つめている家族たちが目に映った。

「沈黙は肯定ととる。そして、感謝しよう。シャロ……いいや、シャルロット・シャロを愛してくれていることに」
「殿下……!」
「奪い取りはしない。ただ……そうだな」

 ご主人様、が、シャルロットを降ろす。よくわからなくて、膝をついたご主人様の顔を見つめると、ご主人様はふわっと笑った。

「笑った……?」
「嘘だろう……?氷の王太子殿下が」

 囁かれる声が、シャルロットの耳を通り抜ける。けれど、シャルロットは久しぶりに見ることのできた大好きな人の笑顔にまた涙が溢れないようにするのでいっぱいいっぱいだった。

「シャルロット・シャロ・ヒュントヘン。私──アルブレヒト・アインヴォルフの伴侶として、この先をともに歩んでほしい」

 跪き、シャルロットの手をとってその甲に唇を当てる。それがプロポーズだと理解するには、シャルロットは幼すぎた。
 だから、ただただ、ご主人様とずっといられるのだと、それだけを理解したから、シャルロットはこの間学んだばかりの言葉を返したのだった。

「ええ、よろこんで」