「──さま」
「シャルロット?」

 兄の腕をすり抜ける。突如、猛然と走り出した主役の姿に、招待客たちは困惑の声をあげていた。──気がした。
 招待客の困惑した声も、兄の、姉たちの、父の、母の、シャルロットを呼ぶ声も、耳には届いた。けれど、そんなことは関係ない、今この時、シャルロットの思考を埋めていたのは、たったひとりだった。

「──ご主人様!」

 会いたかった!
──会いたかった、会いたかった、ずっとずっとずっと、会いたかった!
 あの日の泣いている顔よりも、ずっと大人びた、精悍な面差し。けれど、シャルロットを抱きしめるべく広げられた両腕は、出会ったあの日と変わらず優しくシャルロットへ伸ばされている。

「シャロ……!」

 飛び込んだ腕は暖かく、もう離すまいとでもいうようにシャルロットをぎゅうと抱きしめる。
 ……泥にまみれた記憶がよみがえる。楽しかった、幸せだった。だってあなたが掬い上げてくれた。「わたし」を抱きしめてくれた。

「わたし、あなたに、ずっと会いたかった……!」