「マルティーズったら、とってこいではないのだから」
「あ、ヴィルが追いかけて行ったね」
「本当。お兄さま、本当にマルティーズのことが好きなのね」
「あ、あしらわれてる」
「まあ、ふふふ」
シャルロットは、ふと、アルブレヒトを見上げた。
「アルブレヒトさま。わたし、建国王と子犬姫に誓ったけれど……あなたに伝えたいことがあるの」
「なんだい?」
「わたし、あなたのことが好き。あなたのすべてに恋をして、あなたのことを、全身全霊で、愛している」
「僕も、君が好きだ。君のすべてに恋をしている。この世のすべてを塗り替えるくらいに、君を愛している」
アルブレヒトに返されたシャルロットは、一瞬目を丸くした。そして、心からの微笑みをうかべてアルブレヒトの胸に頬を摺り寄せる。
「ねえ、アルブレヒトさま。もう一度言って?」
「もちろん、僕は君を──」
言いかけたアルブレヒトの唇を、バルコニーの手すりで体を支えたシャルロットが、伸び上がるようにしてふさぐ。
麗しい国王夫妻の口づけに、民衆はわき立った。
やられたな。アルブレヒトは、口の端をあげて、好戦的な笑みを浮かべた。シャルロットを抱きしめて、腕の中、微笑む彼女に噛みつくような口づけを返す。
初夏の緑が萌える。シャルロットは、両腕をアルブレヒトの背に回した。
いつまでも初々しく、恥ずかしがってアルブレヒトの胸に顔を隠すシャルロットが愛しくてならない。
告げた言葉はたった三文字。これが、すべてだった。
「──好きだ」
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