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 ぴくり、と、シャルロットの手が震えた。
 はっと息をのんで、アルブレヒトはその手を握ったまま、シャルロットを見つめる。
 銀色の、長い睫毛がゆるゆる揺れて、その中から萌える木々のようなエメラルドグリーンが顔を出す。

 その目が、ゆっくりとこちらに向いて──微笑む形の口が、小さく小さく囁いた。

「……雨が降ったら、晴れになるの」

 かすれた声。潤んだ瞳。弱弱しくアルブレヒトの手を握り返す手は青白くて。
 気付けばアルブレヒトは、腕の中にシャルロットを抱え込んでいた。
 ぽたぽたと、年甲斐もない涙がこぼれてシャルロットの髪を濡らす。

 シャルロットは、ゆっくりとした動きで、アルブレヒトの胸に顔を埋める。
 アルブレヒトは、唇をわななかせ、そうして、嗚咽をこらえ、ようやっと言葉を絞り出した。

「そうだったね……本当に、そう、だった」

 雲がほどける。朝の光が降り注いで、二人を照らす。
 銀の髪が朝焼けの色に塗り替えられ、見つめるアルブレヒトの目をも暁に染めた。

 シャルロットは幸せそうに微笑んで、けれど何も言わなかった。アルブレヒトは、ただただ、シャルロットをかき抱いて──やがて、シャルロットが上を見上げる。アルブレヒトが見下ろせば、視線の交わった二人はそろって笑みをこぼして。

 朝焼けの光が照らす中、寄り添う二人は触れるだけのキスをした。