とたん、アルブレヒトの姿が変わる。自分と全く同じ容姿をした少女──いいや、シャルロット自身へと。

「ねえ、最初の約束を、覚えている?」

 思いついたように、目の前のシャルロットは言った。
 だけど首を傾げるシャルロットに苦く笑って、空を見上げ、そうね、とシャルロットは続ける。

「雨が降っているの」

 そういって、シャルロットはシャルロットの手をつかんで、屋根の下へと導いた。
 しとりしとりと音がする。ぽつんとシャルロットの手の甲に落ちたひとしずく。雨粒はあたたかかった。

 ──シャロ。

 シャルロットが雫を眺めていると、ふいに、空から声が聞こえた。
 優しい優しい声が。シャルロットが、この世界で一番大好きな声が。
 はっとして、シャルロットは立ち上がった。夢の自分におじぎする。

「ねえ、わたし、約束をしたの。生きて帰るって」
「そうね」
「でもね」

 シャルロットは空に手を伸ばす。つま先立ちになって、ぴんと張った手。その向こう、雲の切れ間が見えた。

「一番最初に約束したの。わたしが、この雨を、晴れにするって」