「ひゃはは!多勢に無勢だな!アルブレヒト!跪け!命乞いしろ!死ね!!死ね死ね死ね!死ねよ!!」
やめて、この人を傷つけないでと、シャルロットが動かない体に動けと命じる。けれど、薬と酒の回った体は息すらまともに出来やしない。
それでも、シャルロットはただ必死で願った。
クロヴィスがいびつな声で笑う。死ね!と、まるで子供のように。
だが、いつまでたっても幾人もの人影は動かなかった。
「な、なんだ、なんで、動かない!」
クロヴィスが狼狽したように叫ぶ。血混じりの唾が飛んで、悪態を汚らしく飾った。
それでも動かない、犬と呼ばれた彼らは、ふいに、力の抜けたように膝をついた。
そうして、誰からともなく、呟く。
「かえりたい」
「おかあさん」
「いたい」
「くるしいよ」
彼らは、犬ではなかった。焼けただれた顔、青あざのある腕、縛られた足──傷つけられ、薬漬けにされた彼らは人間だった。脅かされた幾人もの人間が、壊れたように涙を流している。
「たすけて」
シャルロットとそう歳の変わらないような少女が呟いた。ゆらりゆらりと、クロヴィスに向かって歩いていく。
それに気づいてか、他の人々もクロヴィスへ近づく。その手を、握りしめて。
「やめろ、な、なんだお前ら、育ててやったのは誰だと思ってる、み、未来の王の役に立てるんだぞ?ひ、くるな、くるなよ……やめ、」