どうしよう、失敗してしまった。あわあわと目をぱちぱちしているシャルロットを、しかし包んだのは優しい笑い声で。

 だから、シャルロットは、もういっぱいいっぱいだったけれど、この言葉だけは言わねばと足に力を入れたのだった。

「本当に……本当にありがとうございます!」

 最後まで言い切って、シャルロットは右の足を引き、スカートをつまんだ。
 ちょん、とふたつに結った髪が揺れる。後頭部にかあっとした熱さを感じて、やっぱりどきどきは収まっていなかったのがわかる。

 おそるおそる頭を上げると、シャルロットを待っていたのは割れんばかりの拍手──そして、招待客たちのほほえまし気な表情だった。

「シャルロット、きちんとできたね」
「お父さま」

 頭にぽんと置かれた手は父のものだ。ひんやり冷たい骨ばった手は、シャルロットの汗ばんだ頭をさましてくれるようだ。
 ほう、と息をついたシャルロットを、ヴィルヘルムがひょいと抱き上げる。

「お兄さま、シャルは赤ちゃんではないのよ?」
「僕がシャルロットを抱き上げたいだけなんだよ。お兄様のわがままを聞いてくれないかな」
「兄さま、ずるいわ!わたくしも我慢しておりますのに!」
「そうです、シャルロット離れしてくださいな!」

 そういう姉たちはおいでとシャルロットに手を差し出すが、それじゃあお兄さまとおなじじゃないかしら、なんてシャルロットは思うのだ。