ひりつくような痛みが走る。舌を無理に引き出され、その上になにかさらさらしたものがばさっとぶちまけられるのを感じた。

「さあ、お飲み、僕の愛犬。シャルロット・シャロ。君は僕の犬──愛犬、なんだよ」

 頭がぼんやりする。愛犬──この人はだれだろう。揺れたような頭では、思考がまとまらない。頤をぐいと持ち上げられ、紫の汁が注がれた。
 いやだ、いやだ、助けて……。

 シャルロットは涙を流してもがいた。その拍子に、腕が縄にこすれて赤い傷ができる。
 ──痛い。びりびりとしびれるような感覚が、シャルロットをわずかにとどまらせた。

「い、いえ。わたしは、アルブレヒトさま、の、愛犬だもの、あなたのものに、ならない」

 痛みで現実に引き戻されたシャルロットが、うつろな目をして言った言葉に、クロヴィスは何か叫んでいた。
 次いで、頭の上になにかがびしゃびしゃとこぼされた。紫の視界、甘ったるい、葡萄の匂いと、百合の白が空々しい。

 シャルロットは、ぐっと力を込めて、腕を痛めつけた。赤が見える。それに無性に安心した。
 シャルロットが、シャルロットでなくなってしまうような気がする。
 目の前の男──クロ……ああ、名前が思い出せない。