もみ手をしながらすり寄ってくる育成師に吐き気がした。彼女に決めたと言っているのが聞こえていないのだろうか。

 数分前の自分なら思いもしなかっただろう、過激な考えに笑ってしまう。
 腕の中から、丸い茶色の目を向けられることに、背が震えるような歓喜を覚える。

 誰もいらないなら、自分がもらおう。腕の中に抱いて、自分の唯一として。
 そうして、自分の一部として生きてほしい。

 それは、世界の色が変わるような、魂の執着。
後ろでまだなにか言い募る育成師の声を背に受けながら、アルブレヒトは自室へと歩を進める。

 名前はなんというのだろうか。だれもつけていないのなら、自分がつけてもいいだろうか。
 愛らしい名前がいい。彼女に似合うような。
 この日、この時。生まれて初めて、アルブレヒトは自我の芽生えた心地がした。
 
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