「マルティーズ、アルブレヒトさまは、お元気でいらっしゃる?」
「シャルロット様。会いに行けばよろしいのですよ?」
「いいえ──、今、お忙しい時期だから。寝る前にいつも来てくださっていたけれど、今は来てくださらないもの、それだけ大変なのだと思うわ」

 戴冠式の準備、葬儀の後の種々ある手続きを経て──最後に会ったアルブレヒトの目のしたには濃い隈があった。

 その世話をするようにと、シャルロットは自身のところにいる侍女たちを一時的にアルブレヒト付きにしている。だからシャルロットは、今、マルティナひとりを伴って、食堂に向かって歩いているのだ。
 消沈したシャルロットを、マルティナが痛々しいものを見るように目に映す。

「そんなの、気にしなくても、あの王太子殿下ならもろ手を挙げて歓迎するでしょう。シャルロット様に文字通りメロメロなんですから」
「いいえ、だけど」
「それでも、です。シャルロット様」

 マルティナは、シャルロットの手を取った。

「王太子殿下に、お会いしましょう。そうでないと、シャルロット様が倒れてしまいます」