王の葬儀は粛々と──かの人が王であることを感じさせないほど、静かなものだった。
涙を流すものも、悲しむものもいない。たった一人を除いて。
王の顔を見たことがない人間のほうが多い葬儀を、亡くなった王はどう思うのだろうか。
ベルクフリートに設置されたベッドの上。かつて喪った愛犬の骨を抱いて、眠るように逝った王は、もしかしたら不幸ではなかったかもしれない。
シャルロットは、会ったこともない王の死を悲しめるほど、王のことを知らなかった。
だから、ただ、ただ──シャルロットは、王の棺の前に茫然と立ちすくみ、はらはらと、静かに涙を流す王妃を見ていた。
王はきっと、不幸ではなかった。
夢見るように、だれも顧みず、愛する唯一を抱いて逝けたのだ。楽で、幸福な眠りをこれからも続けるだけ。シャルロットもシャロも、王を知らない。
だから、伝え聞いていた王の話だけで王を形作って想像した。
アルブレヒトとよく似た王──愛犬を喪って心を壊した王。彼は、もしかすると、シャルロットが産まれることなく、二度と会うことのなかったアルブレヒトなのかもしれなかった。