手を動かして表現するエインフント伯爵の話を聞きながら、ヴィルヘルムとマルティナは互いに目配せをした。
 ──見つけた。

 そうして、得た情報をアルブレヒトに伝えるべく、エインフント伯爵との話を切り上げた、その瞬間のことだった。

「お、王が──王が!崩御しました!!」

 見放されたベルクフリートを見張る若い兵士。血相を抱えた年若い少年が、大広間の扉を開けて、叫ぶ。

 一拍ののち、決壊したようなざわめきが広がった。
 ヴィルヘルムとマルティナは、驚いたように目を見開くアルブレヒトと、その隣、呆然と佇むシャルロットの元へ走る。
 いち早く正気を取り戻したアルブレヒトが、シャルロットを守るように抱きかかえ──その刹那、マルティナは、ぞわりとしたものを感じて振り返った。

 悲鳴と泣き声の渦巻く人々の中、マルティナが見たものは、光の失せた緑の目を不気味に淀ませ、ニタァと歪な笑みを浮かべる自身の兄──クロヴィス・ティーゼ、その人だった。

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