ヴィルヘルムとマルティナが控え室を出て行く──そうして、アルブレヒトがシャルロットをエスコートして会場に入った時、どよめきが聞こえ──それがすぐに静寂へと変わった。

 マルティナが、因縁深いと噂されるヒュントヘン次期公爵と腕を組んでパーティーに参加したこと。シャルロットを想起させるエメラルドグリーンのドレスを着ていたこと。
 そうして──飾っていた生花が、「シャルロット」の薔薇であること。

 それら全てが噂好きの貴族の想像を掻き立て、無遠慮に静かな騒音が奏でられ、やがて大きくなる。

 それが、姿を見せたアルブレヒトとシャルロット──いいや、まるで女神のように美しいシャルロットに視線をやった瞬間、釘受けになったのだ。
 純白の生地に、真珠を使った白糸の刺繍。飾られるのはこれも白いリボンと、白い薔薇──「シャルロット」。
 全てが白い中で、シャルロットのエメラルドグリーンの瞳は鮮烈に輝く。
 透き通るように美しいシャルロットを見て、誰も彼もがため息をつかざるを得なかった。

 顔をほんのり染めてアルブレヒトに微笑みかけるシャルロットが、マルティナを見て首肯する。
 答えるように礼をとったマルティナを見て、周囲は二人の和解を感じ取ったように、目を見張った。