あの日、夕食の席でもう一度顔を合わせたシャルロットは、アルブレヒトに言った。
 ──わたしを守ってください。アルブレヒトさま。
 後ろに控えるマルティナが、アルブレヒトの居るべき場所を視線で指し示す。
隣に立ったアルブレヒトを見て、シャルロットはゆっくりと息をした。
 ──わたし、一生懸命、守っていただきますから!
 一生懸命守られる。その言葉がおかしくて、おかしくて、おかしくて──アルブレヒトの目から涙が出た。
 シャルロットを抱きしめる。背に回された華奢な腕は、もう、アルブレヒトの体を守ろうとはしなかった。

 思い出して目を細めていたアルブレヒトを、誰かの肘がつつく。
 アルブレヒトを現実に引き戻したのは、黒を基調とした礼服を着たアルブレヒトと、対であるかのように白い礼服のヴィルヘルムだ。
 全身白く見えて眩しいと言ったら、多分怒る。

「それじゃあ、行こうか、シャロ」
「はい、アルブレヒトさま」
「マルティナ嬢、君も」
「……これはシャルロット様の護衛の一環です。そして、わたくしの名はマルティナ・マルティーズ。それをお忘れなきよう。ヴィオラ様」

 後ろに控えていたマルティナがスッと背を伸ばしてヴィルヘルムの手を取る。緑のリボンで金髪が揺れる。エメラルドグリーンのドレスには、白薔薇の生花が飾られていた。

「わかった。素敵な名前だね、マルティナ・マルティーズ嬢」
「……ッ、ええ。ありがとう、存じ、ましてよ」