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「こんな時にパーティーとは……」
「まあ、仕方ないさ。現国王の生誕記念式典だったからな」
「──その国王は、いまもベルクフリートにこもったままか」
「……ああ」

 閉ざされた控え室でアルブレヒトがぼやくのに、ヴィルヘルムが青ざめた顔で返した。
 ここ数日寝ていないから、目がしばしばする。欠伸を噛み殺して、ヴィルヘルムはアルブレヒトの背後に立つ。
 アルブレヒトも同じだけ寝ていないはずだが、目の下のくまがうっすら見えるだけで、相変わらず平然としていた。

「クロヴィスの背後が全く割れねえ。マルティナ嬢の言った通り、側仕えが長く勤めているが、その側仕えに怪しいところがない」
「例の衛兵からも、その側仕えとの接点が見えなかった」
「衛兵なんてそこを通ればすぐ接触できるからな、特にって言うと、たしかに難しい……だが」

 ヴィルヘルムはアルブレヒトの横を通り過ぎる、ふりをして、小声で耳打ちした。

「クロヴィスは、最近花を輸入してるらしい」
「花?」
「ああ、それも、百合やら水仙やらチューリップ、ときたもんだ」