アンナは、穏やかで、けれど強い言葉で断言した。
 息を呑んだシャルロットをまぶしそうに見て、細まった目を笑みの形にした。

「ですから、私共は、みんな、おひいさまのことが大好きなのです。大切なアルブレヒト殿下をお救いくださった子犬姫さま…。シャルロット・シャロ・ヒュントヘンさま、ご自身が無力だと、お泣きなさるな……」

 シャルロットは、アルブレヒトを守っていたのだろうか、本当に?
 アンナの優しさかもしれない。ごまかしかもしれない……いいや、それでも、一筋の光のようにすら思えて、シャルロットは信じたく思った。

「アンナ、わたしはどうすればいいの。アルブレヒトさまを、傷つけてしまったわ」
「あんなことで傷が付くようにはお育てしておりません。怪我なんて唾をつけておけば治ります」

 ふふ、と笑ったアンナは、だから、と続けた。

「何があっても、生きてください。アルブレヒトさまの隣で、ずっと生きてください」

 ゆるゆると、アンナの腕がシャルロットの背に回る。抱きしめてくれた腕は震えていた。
 ごめんなさい、シャルロットは呟いた。
 生きるという、そのたった一点が、一番簡単で、一番大切な事──。

「わたしを、守ってくれる?アンナ。わたしが、アルブレヒトさまの隣で生きるために」
「ええ──ええ、おひいさま。このアンナでは力不足でしょうが、全力でお守りいたします」

「──力不足なら、わたくしも使っていただけますか」