からからに乾いた喉が、シャルロットの言葉をかすれさせる。
 涙は出なかった。ただただ、情けなかった。
 守られることしかできない無力な自分が嫌で、嫌で、嫌で。

 力がこもって白くなった指先をアンナがさする。

「このアンナには、おひいさまのお言葉をすべて理解することはかなません。けれど、アルブレヒトさまが不器用な方なのは存じております。私がお育てしましたから」

 顔を上げたシャルロットに、アンナは優しく笑った。
 母のそれと、よく似ている。
 その笑顔を見ながら、シャルロットは噛み締めた唇をそっと緩めた。

「それでは、わたしは守られるばかりでいるほうがいいの?」
「いいえ──いいえ」

 アンナは言った。

「おひいさまさまは、もうとっくに、アルブレヒトさまを守っております」
「そんなこと、ないわ」
「目に見える手助けだけが、守るということだとは限りません。アンナはもうずっと、おひいさまがアルブレヒトさまを守ってくださるのを見ていましたよ」

 信じがたい言葉だった。
 シャルロットを元気付けるための嘘じゃないかとすら思えた。
 ──けれど、アルブレヒトの乳母であり、今はシャルロットの侍女であるアンナは嘘をつかない。
 事実としてそれを知っているからこそ、シャルロットはますます混乱した。