「許されたくないならそれでいいわ。けれど、決めるのはわたしよ。マルティナ・ティーゼ」

 すとんと、マルティナの体から力が抜けた。
 崩れ落ちたマルティナに、シャルロットは手を差し出さない。
 シャルロットは、その優しい緑に力を込めて、白い手を握りしめて、今──全身全霊で、怒っていた。

 地に這いつくばったマルティナは、力の入らない足を無理やり立たせる。
 ここで命をかけねば、かける場所が二度と訪れないとわかっていた。

 片膝を立て、ぐらつきながら、心臓に片手を置く。
 無様だった。騎士として訓練を受けたマルティナは、しかし、今は自分で礼を取ることもできない。
 喉から鉄の味がする。
 それを無理やり飲み下して、マルティナは半ば、叫ぶように声を出した。

「ごめんなさい、シャルロット・シャロ・ヒュントヘン。わたくしは、あなたを侮辱した──いいえ、勝手に期待して、憧れて──それなのに、あなたに勝手に失望して、それで、あなたに傷を与えました」

 かしいだ体を支えるように、片手で地面を押さえつけた。

「許されたくない……そんな、ことすら、思っ、て」