マルティナがシャルロットに、謝ってしまう前に。

 けれどいつまでたってもマルティナを拘束する力はなく、気配はそれ以上動かない。

 だから──だから、マルティナはもう耐えることができなかった。
 緑色の目が、マルティナを見透かしているようだった。だから、マルティナは、血を吐くように発することしか、もう、すべがなかった。

「あなたに……謝りたいと、思っていました」
「そう、そうなのね、マルティナ、では」
「だけど!」

 マルティナは続けた。喉が熱い。声帯が、千切れるような気さえした。

「そうすれば、あなたは許すでしょう、わたくしを。わたくしは、許されないことをしたのです。わたくしは許されてはいけない──それだけのことをしました。……だから」
「謝らない?」
「はい」

 最初に告げようとしたことが思い出せない。
 マルティナは、荒くなった息を整える余裕すらなかった。
 そんなマルティナに、シャルロットは静かに告げた。