「あなたは、アルブレヒトさまを好きではないわ。どうしてそんなことを言うの」
はっと見返したシャルロットは、そのエメラルドグリーンの目をまっすぐマルティナに向けていた。
これはいけなかった。
マルティナは、この目で見られると、本心をぶちまけてしまいそうになる。
王城でふとすれ違う時、窓を見上げて、視線があった時──その度に、マルティナは、叫び出しそうになる。
「……言えません」
「でも、」
「わたくしは、それを言うべき権利を持ち合わせていません」
シャルロットを守りたい。
その願いを口に出すことは許されなかった。
幼いマルティナは、何も罪のないシャルロットに子供じみた理想を押し付け、偶像を追い──その果てに、最初に憧れたシャルロットを傷つけて。
自分に追従したものは無視したけれど、言ってしまえば彼女らがシャルロットに向けた悪意を放置したも同じ。
それら全て──全て、あの日に置き去りにしてここまできてしまった。
あの日、シャルロットを打った右手が熱い。
水を打つような感触が消えない。