「わたくしのせいです。シャルロット・シャロ・ヒュントヘン。わたくしがお二人を呼びました。しかし、わたくしは王太子殿下となんの関係もございません」

 シャルロットの前に進み出たマルティナが、威圧するように断言した。
 シャルロットはどうして、と混乱したように小さく告げた。

「わたくしは間違いを申しませんわ。どうとでもおとりになって」
「──マルティナ!」

 ヴィルヘルムが叫んだ。
 マルティナが一瞬ヴィルヘルムを振り返る。

 だが、強く強く睨み据えただけで、マルティナはまたシャルロットに向き直った。
 諦めたような顔、手に入らないともがくことをすでにやめた顔──そのくせ、希望だけは捨てられない、その顔は見たことがあった。

 昔のアルブレヒトと、同じ顔だった。

 ──もしかすると、マルティナ・ティーゼは。

 それに気づいた時、シャルロットはすでに口を開いていた。
 マルティナが、断頭台に立つような顔で目を閉じる。