「マルティナァ!お前、お前……強いのはいい、強いのは!だがコテンパンにしすぎだ!団員が全滅するぞ!」
「あら。父さま。わたくしの隊に弱いものなどいらなくてよ。それに、わたくしを鍛えたのは騎士団長閣下です」
「都合のいい時だけ部下になるんじゃない!まったく……」

 切なそうに眉を下げる騎士団長は、アルブレヒトを見て申し訳なさそうに大柄な体を縮こめた。

「娘のマルティナなんですがね、もう脳筋で……嫁の貰い手がないくらいで……。おまけに、跡を継がせたかった息子は早々に訓練が嫌だと逃げるしで……」

 完全に予想の圏外だった成長に、アルブレヒトはどういうことなんだと当惑した。
 好もしい好もしくない以前に、今の顔についた土汚れをぐいと拭うその姿には、前の面影が見えない。