という謎の声が聞こえる。女性の声だが、明らかに女性の発する掛け声ではなかった。

「まだまだ、もう一本!わたくしに言いがかりを付けるより前に、走り込みでもしたらいかが?」
「……ッソォ……!」

 1つに縛った黄金の髪が、馬の尻尾のように揺れてしなる。
 走りだし、木刀を突き出した大柄な訓練兵。しかし、一瞬で距離を詰め背後をとったその少女は、同じ木刀でもってその男の剣を弾き──いいや、振り抜いて両断した。

 からん。破片の落ちる音に呆然とする猪のような男が、膝をつく。

「脇が甘い!猪突猛進もいいけれど、それは自分より弱いものに通じる戦法!いい加減理解なさい!」
「いや、副団長が強すぎるんだよ……」
「お前今の見えたか?」
「無理。副団長は瞬間移動でも使えるのかな……?」
「そこ!聞こえていてよ!」

 1つに縛ってあるとはいえ、金の髪は、緩やかにウェーブを描いて少女の顔を彩っている。そして、緑の気の強そうなつり目が、アルブレヒトの目を釘付けにした。
 まさか、あの女性騎士は。