一瞬震えたシャルロットに、なにかを感じ取ったのだろう。
 アレクシアはシャルロットの頭をなで、クリスティーネは頬をなでる。

「安心して」
「断るから」

 頼もしくも断言した双子は、そのままあわただしく部屋を退出する。
 直前、名残惜し気にアレクシアがシャルロットをぎゅうと抱きしめ、そのとき、クリスティーネがアルブレヒトに小さく耳打ちした。

「ティーゼ侯爵家周辺が、きな臭いの。だから私たち二人で行くのよ。気を付けて、先輩。……私たちの、大事なシャルロットを、守ってね」
 
 驚いて見つめ返すと、クリスティーネの背後、シャルロットを抱きしめているアレクシアとも目が合う。
 真剣な目で頷く双子に、アルブレヒトは当然だ、と返した。
 思い出すのは先ほど見た男の顔。
 ──クロヴィス・ティーゼ。
 記憶の中の、あの目──泥のようなあの男の瞳に底知れぬものを感じて、アルブレヒトは握った手を見つめた。

「守るさ──必ず」

 何が来ても、もう、失いはしない。そうあるために、強くなったのだから。

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