暗に、情けない黒歴史量産人間と言われた気がした。
 だが、賢明なアルブレヒトは貝のように口を閉ざした。なにか言い返せばシャルロットに何を吹き込まれるか分かったものではない。
 両想いになった今、シャルロットに情けない姿を見せたくはないのだ。

 ──そういえば、先ほどまでこんな余裕はなかったな。

 ふいに思って、アルブレヒトは苦笑した。

「それで、それで?」
「そうねえ、あら、もう夕暮れ?」
「ごめんなさい、シャルロット、明日、ひとと約束があって、行かないといけないの」

 ふと、双子が席を立つ。
 この双子がシャルロットを最優先しないだなんて珍しい。
 アルブレヒトが尋ねる前に、忌々しそうに双子が顔をゆがめた。

「お見合いなのよ」
「そう。私たち二人で」
「お姉さまたち、結婚なさるの?」
「お見合い、よ。かわいいシャルロット」
「相手が嫌なのよ、めんどくさいったら。騎士団長の長男だなんて、無下にできないからますます腹が立つわ」
「え……」

 シャルロットが茫然とつぶやく。
 当たり前だ。なぜなら、騎士団長の長男、それは。

「クロヴィス・ティーゼ……」