「いいえ、先輩」
「なにもありませんわ、先輩」

 ぶすくれる双子の姉を不思議に思いつつ、そういえば、とシャルロットは疑問を口にした。

「お姉さまたちは、アルブレヒトさまと仲良しでいらっしゃったの?」
「ええ」
「仲良しよ」

 シャルロットを目の前にするや、そっくりの顔をにこやかに形作り声をそろえる後輩たちの面の皮は、きっと足の裏ほどあるだろう。アルブレヒトは心の底からそう思ったが、シャルロットの前で真実などつげられようもない。

 あの頃──学園にいたころ、アルブレヒトはシャロを喪ったことで大変に荒れていて、それを抑えるために、ヴィルヘルムに白羽の矢が立った。

 ヴィルヘルムと過ごし、時に悪態をつき、時に殴り合いの喧嘩をし──アルブレヒトはそれでだいぶ立ち直りはしたのだが、ヴィルヘルムになついていた双子が入学してきたとき、アルブレヒトは双子にこてんぱんにのされたのだ。

 双子は王家の血が強く出ているらしく狼犬のような腕力と、双子ながらの連携でアルブレヒトをぼこぼこにした。