落とした独り言を抑え込むように喉に触れる。
 とくとくという鼓動を指に感じて、シャルロットはまた泣いてしまいそうだった。
 花びらが手に入らないのも構わない。
 
息ができなくても苦しくなんてない。
それなのに、いつかアルブレヒトが「ひと」として愛する相手を想像すると、シャルロットはうずくまってしまいそうになるのだ。

 ──わたしは、犬だもの。

 いつか誰かが言った負け犬姫。今になって、それはとても的を得ているように思えた。

「……ある、」
「おや、「愛犬」の姫君。こんなところで供もつれず、どうしましたか」

 突然降ってきた声に、はじかれたように振り返る。
 輝くばかりの金の髪を一つに結わえ、肩口から垂らしている、緑の目をした男。
 目を細めてシャルロットを見ている。

「いいえ、なんでも、ありません」