「マルティナ、シャルロット様と仲良くできるといいね」
「ええ、お父さま。けれど、わたくしが綺麗だから、シャルロット様に嫌われてしまわないかしら」

 そう言って、ふふ、と自信ありげに胸を張る娘がいて、それをたしなめる父親の姿がある。父について紳士たちの間に入っていった少女は、騎士団長を代々務めるティーゼ侯爵家の娘だった。

「わたくし、ここにいる中で一番きれいなんだもの」

 アインヴォルフ随一の貴族たる、ヒュントヘンの公爵家の末娘の友人とくれば、そこから得られるものはたいていのうまみの比ではない。

 しかも、シャルロットを溺愛するもののはその当主以外にもいる。
 だからこそ、友人になれれば娘のためにもなるだろうと思って連れてきたが、どうやらこの勝気な娘には少し早かったようだ。

「マルティナ、お前は良い子だが、もう少し勉強するといいね」
「どうして?お父さま。自信を持つのは大切だとおっしゃったではないですか」

 つんと上向いた鼻に、くっきりとした眉。 
 深い緑の美しい目に輝く金の髪とくれば、それはたしかに美しいだろう。

 だからこそ、周囲の、シャルロットを見たことのある貴族たちは同情まじりの暖かい目でマルティナ・ティーゼを見つめたのだ。確かにマルティナは愛らしい娘ではあるのだが……と。

 その時だった。