立ち上がったヴィルヘルムが、アルブレヒトを椅子から落とさんばかりにぎゅうぎゅうと押した。
 どういうことだ、と、アルブレヒトは眉間にしわを寄せ──そうして、窓の外を見て固まった。

「へ、アル、」

 みしり、と執務机の端がゆがんだ。いや、正確に言えば、ひびが入ってたわんだ。
 驚くヴィルヘルムには反応せず、アルブレヒトは執務室の扉を開ける。──鍵がはじけて、蝶番ごと飛んで行った。

 ドォン……重い音がして、扉が床に沈む。
 アルブレヒトが出ていく一瞬、黒い髪の隙間から覗く青い瞳は、不穏な色に陰っていた。

「アインヴォルフ王族の、馬鹿力め……」

 後に残るのは、これからのフォローにげんなりとしてぼやく、ヴィルヘルム・ヴィオラ・ヒュントヘンただ一人だった。

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