甘酸っぱい苺は、アルブレヒトの口内をたっぷりの果汁で満たす。たしかに例年のものよりおいしかった。
ごくんと飲み込んで、再びシャルロットを見る。みずみずしい唇に、少しだけ苺の赤が残っている。斜め向かい、苺に夢中のシャルロット。テーブルに手をついて、伸び上がるように口づけた。
「あ、あえ?」
頬を赤らめるシャルロットが、とても好きで、好きで──やっぱりアルブレヒトは、シャルロットに恋をしているのだと実感した。
一瞬触れた唇は冷たく、甘い匂いがして、さわやかな味がして。
それだけで、この焦げ付いたような想いが少しだけごまかせた気がした。
「そろそろ、時間のはずだが」
アルブレヒトは、王のものだった執務室ではあ、と書類をめくる。
向かいで鬼のような速さで決済済みの判を押していたヴィルヘルムがアルブレヒトをじっとりと見やる、そして、あのなと口を開いた。
「姉たちと話すのにも嫉妬するのか」
「そんなことは、ない」
「そこは言い切ってほしかった」
「わからないんだ」
アルブレヒトが吐露した言葉に、ぴくりと反応したヴィルヘルムが、何を。と短く言った。
「シャルロットが欲しくてならないが、おそらく嫌われてしまった」
「それを本人の兄に言えるお前の胆力がすごいよ。だいたい、嫌われたって?シャルロットが?お前を?冗談は結婚してからにしろ」