アルブレヒトにとって、シャルロットは犬だ。愛犬だ。
 シャルロットはアルブレヒトの犬にはなれても、恋人にはきっとなれない。
 家族だけれど、恋心はもらえない。
 王妃の気持ちが、とてもよくわかった。
 
 恋は幸せで、恋は残酷で、同時に恋は、長い長い忍耐の、はじまりなのだ。

 片恋のなんと切ないことか。
 シャルロットは、どうしようもなかった。
 氷の王太子。この名前は、春に生まれたシャルロットにとって、ひどい皮肉だ。
 氷は春には溶けてしまう。春は氷といられない。

 ぎゅっと胸元で握った手は、シャルロットがもつ権利を、けして離すまいと握りしめているのに違いなかった。

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