王が王妃を顧みなかったから、王妃はあんな顔をするのだろうか。

「シャルロット?」
「どこが痛いの?」

 姉たちがシャルロットの顔にそれぞれ触れる。
 温かくて、それがアルブレヒトの手の温度と違うことに気づいて、シャルロットの目から一筋の涙がこぼれた。

「あれ、わたし、どうしたのかしら」

 不思議に思って涙を拭う。
 そうして、その冷たさに、ああそっかとシャルロットは納得した。
 すとんと、腹のなかに重りが落ちるような感覚。背筋がしゃんと真っ直ぐになって、代わりに、恋というものの奥深さにくっと歯を噛んだ。

「ああ、わたし、アルブレヒトさまのこと……」

 シャルロットは、アルブレヒトに恋をしていた。
 シャルロットは、ひどく納得してしまった。

「痛いの?シャルロット」
「悲しいの?シャルロット」

 泣かないで、とは言わない姉たちの優しさがじんわり染みる。
 シャルロットはアルブレヒトのものだ。
 それが最上の幸福だと思っていればよかった。
 知りたくはなかった、けれど、知っていなくてはいけなかった。

 アルブレヒトは、シャルロットの所有を口にした。けれど、その実、アルブレヒトのことは、シャルロットにくれはしなかった。