──あなた、アルブレヒト殿下に恋をしてるのよ。

 姉たちが言った言葉が脳裏に反響する。
 恋──恋──これが、恋だという。
 恋は、こんなに幸せなものなのだろうか。気持ちが良くて、浸っているだけで心地いい。
 アルブレヒトに、恋をしているのか、シャルロットは。

「恋……、これが……?」

 なら……ならば、王妃の苦しみはなんなのだろう。
 王妃は恋をしている。
 それが苦しいと、悲しいと、王妃はドレスで表している。
 アインヴォルフ王国の聖獣を、今もけして部屋に飾らぬ王妃は、今でもきっと、苦しんでもがいているのだ。

 シャルロットは、シャルロットの居室の窓の外から見える、遠く王妃の部屋に視線を向ける。王城の中央にある、王妃の部屋。その向こう、ベルクフリートの頂上がわずかにのぞいている。