ここまでの大きさの苺をそろえるには、けして並みならぬ労力がかかるだろう。それも愛娘のためにと、こともなげにしてしまえる主人の器量に、とりわける使用人も誇らしげな顔を隠さない。

 トルテだけではない。口にいれればほろほろと崩れる揚げ菓子、シュネーバル。アーモンドを振りかけたものや干したオレンジを砕いて混ぜ込んだものなどさまざまな種類が並んでおり、幼い令嬢や令息の目を奪う。

 焼きアーモンドが食べやすいように花柄の小皿に取り分けられ、その向かいのテーブルでは干し苺をたっぷり混ぜ込んだクラップフェンが、さくさくと奥方たちの歯を心地よく刺激し、しっとりとした揚げ菓子特有の触感でもって舌に甘さを伝えていた。

 おいしいお菓子に、幼い令嬢、令息はもちろん、それを監督する母親ですら舌鼓を打たざるを得ないのだ。

 こちらには、子供用にとオレンジを絞ったものにシロップを混ぜ込んだ甘い飲み物が用意されており、まだ今日の主役が来てもいないのに、ヒュントヘンの子犬姫たるシャルロットの誕生日パーティーは和やかな談笑に包まれていた。