とくん、とくん、とくん、とくん。
胸の音がうるさい。それに、どうしてこんなに苦しいのだろう。
甘苦しいような感覚に、手足がぞわぞわして、シャルロットは震えた。
嵐のような口づけだった。
アルブレヒトは、シャルロットを大切にしてくれる。
それはシャルロットがシャロだから──愛犬だからのはずで……シャロは、こんな風に扱われたことなどなかったから、今自分を襲っている感覚がなんなのかわからなかった。
いやではない。好もしい感覚だ。
だけど、はじめての激しい感情に押しつぶされて、シャルロットはもういっぱいいっぱいだったのだろう。
アルブレヒトが、シャルロットと視線を合わせる。そうして、喉を撫でられて、シャルロットが懐かしさに目を細めた時のことだ。
「君は僕のものだ、シャロ」
アルブレヒトが、そんなことを言った。
「ある、ぶれひと、さま」
「君が僕から離れることを、僕は許さない」
シャルロットの身体が、背筋を駆け上った、大きな感情のせいで震える。
アルブレヒトは、シャルロットを自分のものだと言ったのだ。
それは当然のことだ。シャルロットはアルブレヒトの愛犬だ。アルブレヒトのために存在するといってもよかった。
けれど、アルブレヒトは自身からシャルロットを離さないと言ったのだ。
背中がびりびりして、シャルロットは──シャルロットは──……。
喉が震えて出てこない。声を出そうとしても、身体は大きすぎる想いを持て余して、思う通りに動いてくれやしなかった。