シャルロットが、自分の顔を抑えて俯いた。逸らされた目に、そんな資格もないのに胸が痛んだ。
だけど、シャルロットがアルブレヒトから離れたら、死んでしまうのはアルブレヒトの方なのだ。
シャルロットがアルブレヒトから一歩、足を引いた。
それを知覚してしまうと、もうだめだった。
シャルロットの腕をとって、ぐいと自分に引き寄せる。
ふたたびゼロになったシャルロットとの距離に安堵してしまう自分に吐き気がする。
それでももう、その一言が自身の口から飛び出すのを止めることはできなかった。
「君は僕のものだ、シャロ」
「ある、ぶれひと、さま」
「君が僕から離れることを、僕は許さない」
射抜いた視線を、シャルロットは受け止めた。──否、アルブレヒトがシャルロットを串刺しにしたと言った方が正しかっただろう。
縫いとめられたように動けないシャルロットを見つめたまま、アルブレヒトはシャルロットを腕の中に閉じ込める。
水を運んでくるといった侍女の姿は、いつまでたっても見えない。控えていた侍女たちは、遠くに距離を取っている。きっと、アルブレヒトがこんなことをしているなんて見えないだろう。
それをいいことに、アルブレヒトはシャルロットが極度の緊張で気絶するように眠るまで、その腕に抱きしめたまま──こみ上げる淀んだ欲を、腹の中に押し込めていた。