呂律の回らない口で、アルブレヒトを呼ぶ。それ以上聞いていたらこのあとの一線を超えてしまいそうで、思わずアルブレヒトはシャルロットの口を手のひらで塞いだ。

「ん、ん!?」
「ごめん、ごめんシャロ。僕は……」

 狼狽したアルブレヒトを驚いたように見つめるシャルロットと視線が交わる。
 もういい大人なのに、シャルロットを前にして、こんなに抑えが効かないなんて思わなかった。
 自身がシャルロットに飾ったアーモンドの花弁が一枚、はらりと散った。

 その時、4年前の婚約披露のパーティーのことを思い出した。アルブレヒトがシャルロットから目を離した原因──その言葉。

 ──あまりに過保護で、シャルロット様が逃げてしまいそうです。

 はっと、アルブレヒトは瞠目した。散ったものが、シャルロットからの信頼だとすら思えて、アルブレヒトはうろたえる。

 アルブレヒトは、シャルロットをもう手放せない、そんなこととっくにわかっている。
 それでも──わかっていたはずなのに、シャルロットが自分の腕をすり抜けていくのを想像して、身体が凍るようだった。

「あ、あの、わたし、わたし、」