──はじめて触れたシャルロットの唇は、まるで砂糖菓子のように甘かった。
 シャルロットは無垢だ。シャルロットがまだ恋をしらないこともわかっていた。

 それでも、シャルロットがうろたえたように、照れた様に頬を赤らめ、潤んだエメラルドグリーンの瞳でこちらを見てきたから。かわいくて、かわいくて──恋しくて、耐えようと思っても、もうだめだった。

「ぷあ、あ、あるぶれひと、さまっ?」

 唇が離れる。鼻で息を吸うという知識もないシャルロットが愛しい。
 無垢で、無邪気で、アルブレヒト以外からこんな感情を向けられたことのないシャルロット。

 この恋を知らぬ少女を、大切に大切にいつくしんでいきたいと思っていたのに、どうやらシャルロットに恋をしていると自覚してから我慢した10年と少しという歳月が、いよいよアルブレヒトの理性をすり減らせているらしかった。

「シャロ……」
「あ、あるっ、ん、」

 二度目の口づけもやはり甘くて、それなのにどうしようもなく気持ちが良かった。
 好きだ、愛している、恋をしている。
 好意の言葉全てを束ねても足りない。シャルロットが好きで好きで、たまらないのだ。

 歯列をなぞり、形のいい歯を舐める。開いた口の中に舌を侵入させて、シャルロットの薄い舌を絡めとった。

「ん、ん、んぅ、ん!」

 力の抜けた拳がアルブレヒトの胸を叩く。
 はっと我に返ったアルブレヒトは、弾かれたようにシャルロットを解放した。

「あ、あうぶえひとさま…?」