そう言って、アルブレヒトは手に持っていたなにかを、シャルロットの耳元の髪に差し込んだ。
 ふわっと、甘やかな香りが強くなって、シャルロットの鼻腔をくすぐる。
 思わず触れたそこには、やわらかな花の感触がある。

「ごめんね、本当は、この花をシャロに飾りたくて、待っていたんだ」

 さらさらと、風が吹いた。
シャルロットの髪を飾っているのと同じ、アーモンドの、薄紅色の花びらが風に乗ってひらひらと舞い散る。

 アルブレヒトの笑顔が、シャルロットへ向けられて、愛しさに満たされた眼差しが、シャルロットへ一身に注がれているのを感じて、だから、いいや、だから──それが、急に恥ずかしくなってしまった。

「あ、あえ?え、っと」
「シャロ?」

 アルブレヒトの顔を見ることができない。火照った頬をさましたくて、自分の頬に両手を当てた。
 おかしい、急に心臓が早くなって、顔が熱くて、どうにかなりそうだ。

「ご、ごめんなさい、アルブレヒトさま。わたし、風邪をひいてしまったのかも」