16歳になったシャルロットは、その完璧な愛らしさに美しさを兼ね備えた、奇跡のような容貌をしていた。

 今日は緑のリボンのついた淡い水色のドレスを着て、丁寧にくしけずられた髪の上半分をまとめた結び目にはドレスに結んであるのと同じ、緑のリボンをしている。
 いつだってにこやかに、そしてどこか無邪気に。

 音と気配と匂いに敏感な公爵家の姫君──子犬姫。
 そろそろ結婚の準備を、と囁かれているのを知っている。シャルロットは、アルブレヒトと結婚できるのがとてもうれしい。

 ……だけれど、王妃の言う「恋」が何なのか、まだよくわからなかった。
だって、シャルロットにとって、アルブレヒトはずっとずうっと世界で一番大切な人だったから。これ以上があるなんて、予想もつかないのだ。

「シャロ」

 ふわり、と。花の匂いがした。
 中庭に面した回廊を歩く途中、やわらかな、低い声が落ちるようにシャルロットに届く。
 思わずそちらに顔を向けると、シャルロットのほうへ歩み寄ってくるアルブレヒトの姿が見えた。

「アルブレヒトさま」
「母上との茶会は終わったんだね。ちょうど、シャルロットがここを通る気がしたんだ」
「まあ」

 シャルロットは頬を染める。アルブレヒトにこうやって優しくしてもらえることが、シャルロットはとても好きだ。