「お義母さま、わたし、アルブレヒトさまが大好きよ」
「そう、ありがとう、シャルロット」

 王妃がシャルロットの頬を撫でて、笑う。

「わたくしは、ずっと片想いをしているから、あなたたちが羨ましい……」

 意図せず出た言葉だったのだろう。王妃は、自分が口にした言葉に気づいていないようだった。
 王妃は、王がベルクフリートに行ってから、前よりずっと落ち着いた色を着るようになった。
 もしかしたら、そういうものが、片想いの色なのかしらとシャルロットは思った。

 深い青、濃い緑、灰色に、焦げ茶。
 そういうものが片想いなら、それを内包する恋というのは、シャルロットが知らぬような、重苦しいものなのかもしれない。

 窓の外に視線を向ける。ベルクフリートは、王妃を拒絶してでもいるかのように、その全てを閉ざして、堅牢に佇んでいた。

口づけは、花の匂いにつつまれて
 王妃とのお茶会を終え、退出したシャルロット。

 シャルロットの銀の髪は淡く、ところどころのこげ茶に、少しの灰色がまざっている。
 大きな緑の目はどこまでも透き通って、侍女に付き添われて自身の部屋に戻る様子を見た衛兵が感嘆のため息をついた。