私は誰かのためになにかするのが性に合っているんだなと、つくづく感じながら私も口元を緩めると、誠一さんはなんとなく改まった様子で「これも考えていたことだが」と前置きしてから告げる。

「ラストフライトの日、芽衣子も休みを取っておいてほしい。最後に君を乗せて飛びたいんだ」

 予想外の頼みに、私は目を丸くした。

 彼がパイロット人生に区切りをつける大事なフライトに、私も同乗できるなんて素敵すぎる機会だし、とっても嬉しい。けれど、それはご両親とかじゃなくていいんだろうか。

「すごく嬉しいんですが……なんで私を?」
「大切な人だからに決まってるだろ」

 迷いのない表情で当然のごとく断言され、心臓がドキリと大きく脈打った。

〝妻だから〟じゃなく〝大切な人だから〟と言ってもらえただけで、胸がいっぱいになる。結婚したのにどこか心許なかったものが、彼が温かい言葉をくれるたび徐々に満たされていく。

 今夜は夫婦らしさが少しだけ増したようにも感じ、喜びを隠せない笑みを浮かべて「その日、絶対休みます」と宣言した。