「誠一さん、最近体調が悪かったりしますか?」
「いや、特に。どうして?」
「ここのところ元気がない日が多い気がするので、ちょっと心配になって」

 キョトンとして答える彼は、嘘をついているようには見えない。体調に問題がないなら、悩み事かなにかだろうか。そもそも私の気にしすぎだったりして。

 あれこれ推測していると、誠一さんの表情がふっとほころぶ。それが思いのほか嬉しそうで、今度は私がキョトンとする。

「よく見てくれてるんだな、俺のこと」
「……これでも妻ですからね」

 そんなふうに言われるとちょっぴり照れる。が、誠一さんを支えるとお義母様とも約束したし、気にかけるのは妻として当然だ。これくらいしかできないのが歯痒いけれど。

 誠一さんはまつ毛を伏せ、少し思案してから口を開く。

「そうだな、身体はどこも悪くないし、悩んでるわけでもないが……もうすぐパイロットを辞めることで、気持ちが落ちているところはあるかもしれない。もっと続けていたいって本音が、うまく昇華しきれてない感じだ」

 少しずつこぼれ出した彼の心の内に、私はグラスを置いてしっかり耳を傾ける。