誠一さんがフライトから帰ってきてから、私はますます自分自身がよくわからなくなってきている。

 彼と一緒にいられて嬉しいし、微笑まれるとすごく安心するのに、どこか物足りない。甘やかされるのは今に始まったことではないのに前以上にドキドキして、その反面かすかに虚しさのようなものを感じるようにもなった。

 そして、これまでフライトの話を聞くのは無条件に楽しかったのに、頭の中に女性の影がちらついて気になってしまう。とはいえ、仲のいい女性はいるんですか?なんて聞くのもおかしいし、聞いたとして〝いる〟と答えられても困る。

 これまでにないもどかしさを抱きながら日々を過ごしていたものの、九月に入った頃、私は自分よりも誠一さんのことが気にかかるようになっていた。

 最近、彼に元気がない気がするのだ。とても些細な違和感なのだが、家に帰ってくるといつも以上に疲れているように見えて少し心配になっている。

 今夜も、地上勤務を終えて帰宅した彼が小さくため息をついていたので、はっきり聞いてみることにした。

 夕食を食べ終えた後、明日もフライトではないので少しお酒を飲まないかと誘った。ライトアップされたテラスを眺められるラウンジで隣り合って座り、私はアマレットミルクを嗜みながら「あの」と切り出す。