【先日、副操縦士に昇格して初めてのフライトを無事終えました。私が尊敬する人のひとりである機長から『よかったよ』と言われた時は、涙が出そうなほど嬉しかったです。彼のようなお客様を思いやる一流の機長を目指して、日々成長していきたいです】

 目標を持って頑張っているのがわかる内容を読んで、また胸に小さな痛みを覚えた。

 私とそんなに歳が変わらないのに、妃さんのほうが何倍も努力していて、何倍も輝いている。そういう人は他にもたくさんいるが、こうして改めて思い知らされると自分との差をまざまざと感じ、劣等感を抱いてしまう。

 それに、機長は何人もいるのだから、当然この記事に書いてあるのは誠一さんのことだとは限らない。でも、一緒にフライトをしていてもおかしくないし、彼女の頑張りを間近で見て褒めているかもしれない。

 いや、妃さんだけじゃなくCAさんだってそう。彼の近くにいて、素敵な部分をお互いに見つけているのだと思うと、無性に胸がざわめいてもやもやする。

 ……郁代さんの言う通りだった。私の中にもこういう感情があったんだ。

 同時にわかったのは、誠一さんにとって特別な存在でありたいと、大層な欲を抱いているということ。結婚している私は十分特別な位置にいるはずなのに、それだけではどうしてか満たせない。

 私はこんなに欲張りな人間になってしまったのか。自分の変化に戸惑いつつ、社内報のページを閉じてそっと元の場所に戻した。